中国の最西端 カラクリ(喀拉庫里)湖

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中国の最西端 カラクリ(喀拉庫里)湖その湖は中国の最西端、パミール高原の入り口にある。標高3,600m、ウイグル語で「黒い湖」を意味する。正面にパミール高原の最高峰、ゴンクール山(標高7,719m)が、右手には万年氷河を頂くムズターグ・アタ(標高7,546m、ウイグル語で氷山の父)が、共に競い合うように秀麗な姿を湖面に写している。空気が希薄なせいか少し息苦しい。不思議な静寂の中で、澄み切った空気が流れ、時間が止まっている。ここは天上に近い、のどかな楽園か。燦燦と降り注ぐ太陽の暖かさと、真っ黒に日焼けしたキルギス人の遊牧民の物売りが、我々をしばし幻想の世界から現実の世界に引き戻してくれる。

ここから先は、タジクルガンの検問所を抜け、標高4,943mのクンジュラス峠を越えれば、後はパキスタンのタコルまで一気にカラコルムハイウエイを下ることになる。正にカラクリ湖は、中国の最西端に位置する、最も標高の高い山上の神秘な湖水なのだ。

カルクリ湖への旅の起点は、新彊ウイグル自治地区、オアシスの町カシュガル(喀什)から始まる。ウルムチから1,360キロ、天山南路の最西端、タクラマカン砂漠の西部、ホータンやヤルカンドへと続く西域南路の合流点だ。パミール高原にそびえる7千m級の山々から流れ出る豊富な水が、南彊随一の肥沃なオアシスの町を形成した。

旅の始めに、市内のエテイガール清真寺を訪れ、旅の安全を祈った。創立1442年、総面積1万6千8百平米、中国最大のイスラム寺院だ。両脇に高さ18mの尖塔を配し、薄黄色のタイルで鮮やかに飾られた大門(高さ12m)をくぐって大礼拝堂に向かう。全長160m、柱頭に美しい彫刻を施した140本の方柱が花草模様の格子天井を支える。7,000~8,000人が一度に礼拝できると言われる。

寺院の脇のバザールも、訪れて実に楽しい。大小様々なナイフや農具、ウイグル帽、色とりどりの布地屋や果物や、ウイグル人のネッカチーフ、毛皮、楽器や民芸品まで、ありとあらゆる物がある。ヤギや馬、ラクダなどの動物も、じっと客待ちをしているのが愛嬌である。ここではウイグル人、モンゴール人、キルギス人、ウズベキスタン人など多民族が自由に往来し、漢文化とは異なる中央アジアの匂いを濃厚に感じさせてくれる。

さていよいよカラクリ湖へ出発だ。カラクリ湖まではカラコルムハイウエイを車で4時間、片道約197kの道のりである。この道は別名「中・パ公路」とも言われ、中国(カシュガル)から世界の屋根、パミール高原を抜けてパキスタン(タコル)に至る1,100kの高原の道である。

朝早く夜明け前に出発し、途中夜明けの小村で朝食を取る。車はいくつかの小さな村々と砂礫の大地をひたすら駆け抜け、クズ(赤い)川に沿った峡谷を登り、やがて峻厳な山道に入る。草木のほとんど生えていない砂漠から、様々な色の岩石が露出した幻想的な岩山を抜けると、いきなリ氷河を頂いた峯峰が顔を覗かせる。緑豊かな日本では全く見られない不思議な光景である。やがて車はブルンコルの静かな湖畔で休憩する。

これは何と言う光景であろうか。宇宙船で月世界へ舞い降りたとでも言えばいいのか。対岸には、真っ白な雪のような砂をかぶった丘がうねうねと続き、一本の草木も見られない。薄青く湛えた湖水は周囲の景色を写して、何とも幻想的な浄土の世界としか言いようがない。

更に進むこと1時間、やっと目的地、カラクリ湖に到着した。

カラクリ湖には、次のような伝説がある。湖畔の青年が美しい娘を見初め求愛した。娘の父親は、ムズタグ・アタ山の雪蓮花を取ってくることを結婚の条件とした。青年は山に住む仙女の助けで禁断の雪蓮花を盗み出すことに成功。見事結婚した彼らは、キルギス人の祖先となった。一方神の掟を破った仙女は捕らえられ、ムズタグ・アタに閉じ込められ、その涙はカラクリ湖となり、その髪はムスタグ・アタ山の氷河となったと言われる。

2世紀のローマの地理家、プトレマイオスも、インドへ仏典を求めて旅した7世紀の玄奘三蔵や慧超、悟空もこの道を通って旅した。コンクール山は夏でも氷河を残し、11の峰が連なる。ムスターグ・アタは白雪を被って眩しい。紺碧の湖水に逆さに映る姿は何と形容すべきであろうか。キルギス人がヤクやラクダを連れて訪れる。パオを巻く手織りの長い長い刺繍の帯を買った。

パミール高原は、天山山脈、崑崙山脈、ヒマラヤ山脈、ヒンヅークシ山脈などが集って、7千メートル級の山々を構成し、多くの深い河谷を刻み、ヴィクトリア湖、カラクリ湖などの氷河の水を湛える紺碧の湖を作り出した。

パキスタン側から上ってきたフランス人の団体に行き逢った。年寄りも交えて、皆元気でカシュガルに向け我々より先に下っていった。我々も次回はクンジュラブ峠を越えて、パキスタンへの道を辿りたいと願いつつ、カシュガルへの帰途についた。

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